目次
- はじめに
- 雨戸の開閉
- 接写写真の撮り方
- 薄板の板厚寸法の測定
- 曲げ試験装置
- 薄板の圧縮試験
- 板の面内の曲げにおけるひけ
- 圧接性試験
- 圧接における接合性向上のための工夫
- 異周速圧延の利用
- 圧延圧力分布の測定
- 円管の曲げ加工
- 偏肉のある円管の製造法
- 不均一変形と加工欠陥の利用
- 鋳鉄粉の魅力
- 細線の製造法とその利用法
- エスキモー社会での常識
- 技術者を目指す者への教訓
1 はじめに
著者は子供の頃から機械いじりが好きで、将来機械技術者になりたいと考えて大学に入った。卒業後、企業で機械を扱ってから大学に戻り、研究生活を始めて40年近くになる。テーマを創出し、その研究に必要な装置を作り、実験して結果を整理する。これら研究全体にわたって、普段から身近にある自然現象に関心を持ちながら、新しい加工法や測定法、理論を提案してきた。この冊子は、それらをもとに開発した技術の発想、開発過程、技術をひもづく成功させるための考え方、技術者としての興味の持ち方などについて記したものである。
どれも一見あたりまえで、たいした技術でないと感じるものが多いと思う。いわゆる『コロンブスの卵』である。身の回りに面白い技術の種が転がっている。しかしそれに気づく人は少ない。先端技術は必ずしも難しいものばかりではなく、自然の挙動を取り入れた簡単で利用価値の高い技術があることを知られたい。面白さを感じてもらえれば幸いである。
きっと工学系の技術者を志す者だけでなく、広く理科系を志す者、それどころか関係ないと考えられる文化系を志す者にとってもなにかしら役立つと思う。
この冊子が大学に入学したばかりの人や将来専門にしたい研究分野で卒研を始めた人、大学院で研究を始めた人、将来指導的技術者になりたいと思っている新入社員などに少しでも役立てばと思っている。
(注)各章の最後に著者の研究生活から得た語録を記す
本書のタイトルについて
研究テーマを与えられた学生が、指導教官から説明を受けた研究方針に従って、真面目に研究を進めて得られた成果は指導教官のものである。その場合、学生は学生実験や研究という作業をしただけだ。
一方、人を驚かしてやろうと思って研究に取り組めば、途中で魅力ある現象に出会ったり、新しい理論が浮かぶ者である。それらを展開して、与えられた研究テーマから変化があったとき、本当の研究をしたといえる。その場合の成果は学生のものである。